ある日、少女は行きずりの男を匿う。その男が少女に与えたものは「刺激」と「幸福」。洞窟の中でひっそりと逢瀬を重ねる二人。
しかし、その男は「敵」の手先だった。
男の手引きでアカデミーに侵入したファイレクシア軍は、圧倒的な武力を展開。それは、紛う事ない「虐殺」の光景である。
アカデミーが陥落し、最後の・・・希望の光が時間を修正するべく飛び立つ中、少女は未だあの洞窟にいた。
アーティフィクサーとしての素質に恵まれ、容易に他人と打ち解けないながらも優しい心を持った少女が、血の海に溺れ、涙を流しながら息絶える姿を誰が予想し得たであろうか。
あまりに悲惨な少女の最期に涙する者がいた。
少女が息絶えた時間を特定し、死神が少女の首に鎌を振り下ろす寸前にドミニアに突如現れた「それ」は、悲しみに呆然とする少女を次元の彼方に連れ去った。
ドミニアの魔術師なら、「それ」のことを「Plainwalker」と呼んだに違いない。
ドミニアを離れた少女は、世界について考える様になった。
世界は実はゲームの様に単純で、システマチックだけど運の世界。そして、自分はただ運が無かったのに違いない・・・少女の考えは、日毎大きくなり、やがてそれは妄想へと進化するのだった。
少女の全ての傷が癒える頃、少女はついに、かつての世界をカードに封印することを思いついた。
自分を裏切り、貶めたファイレクシア軍もあの男も、すべてを紙切れの様に扱って、ぼろぼろに崩してやる。
そのカードを創造したのは、もちろん彼女ではない。
それは、部屋の片隅に落ちていた一枚のカードを見た時から始まった、彼女の妄想に過ぎない。
しかし、あなたが少女にそんなことを言っても無駄だ。
少女の心は、あの災害によってとてつもなく歪んでいた。
少女・・・かつてジョイラと呼ばれた少女の復讐が、今始まる。