◇昔のПсиニュース◇
(Псиニュースの過去ログです)

◇平成14年12月◇

第53回 紅白歌合戦
Be a gothic-X[ElDorado]
Be a gothic-IX[X JAPAN]
平成14年12月31日 第53回 紅白歌合戦

 年末です。今日で今年もおしまいです。・・・とはいえ、そんなことは暦の上の話でしかありませんから、明日から劇的に何かが変わるわけではありません。というよりも、戦いに疲れたヒトにとっては、年明けがいつだろうと知ったことではないと思います。心中、お察し致します
 さて、一般のヒトにとっての一年の締めくくりといえば、なんといっても「紅白歌合戦」です。「男女でチーム編成を行うのが既に時代錯誤」「ヴォーカルが女性なら紅組というのは違わないか」「美川健一は白組で良いのか」などと、運営方法を色々と取り沙汰されているイヴェントではありますが、それでも紅白の舞台は年納めの晴れ舞台。他局では遥かに長い持ち時間でカウントダウンライヴを行うアーティストもいますが、それはそれとして、NHKお得意の寒い企画寒い演出かませ犬的配置を自分の好きなアーティストが必死で無視しようとしている様を見届けるのも、年納めの行動としては素敵かもしれません。素敵にむなしいです。
 そんな紅白歌合戦も、なぜか最近は視聴率がちょっぴり下降気味。参考までに、過去五年間の視聴率と司会を見てみると・・・

西暦 視聴率(1部/2部) 司会
2001 38.1%/48.5% 有働由美子・阿部渉
2000 39.2%/48.4% 久保純子・和泉元彌
1999 45.8%/50.8% 久保純子・中村勘九郎
1998 45.4%/57.2% 久保純子・中居正広
1997 40.2%/50.7% 和田アキ子・中居正広

 ・・・いろいろと邪推ができそうですが、やめておきましょう。ちなみに、一際高い視聴率を弾き出した1998年の第49回紅白歌合戦ではL'Arc-en-Cielが登場。第二部の序盤に登場するも、尺がとんでもなく短い「HONEY」を演奏して帰っていきました。
 そもそも、第一部の締めで「この後の第二部ではラルクアンドシエルが」という対象が対象なら左遷も辞さない類の紹介をされた上、次の年にはポップジャム事件があった為、あまりL'ArcをNHKでみかける機会はなくなってしまいます。
 そんな刺すか刺されるか、殺伐とした雰囲気の紅白歌合戦も、視聴率を稼げるだけのキラーアーティストの不在、更には裏番組の充実などから、最近では秋に出場歌手が発表されたら話題の鮮度が急降下している感が見受けられます。

 さて、今年の紅白歌合戦の目玉といえば、なんといっても中島みゆきさんです。中島みゆきさんといえば、各種Flashムービーでおなじみの「プロジェクトX〜挑戦者たち」の主題歌「地上の星」が大ヒット。ヒット曲が短命といわれるこのご時世に、100週連続チャートインというのは、偉業という他にコトバがありません。
 そんな中島みゆきさんが、ついに紅白初出場。ちなみに、出場に際してのコメントは、以下の通りです。

デビュー27年目のぜんぜん初々しくない初出場なので、面映ゆい気がいたしますが、「プロジェクトX」に御礼を申し上げたい気持ちでいっぱいです。

 ・・・普通に素敵です。そんな発表の後も、直前まで行われる「夜会」では犬を演じるとか、紅白では黒部ダム付近の洞穴から中継など、出場前からアレな話題には事欠かない状態でした。
 他にも、平井堅さんやアルフレド・カセーロ&THE BOOM、もうちょっとコアな方だとジョン・健・ヌッツォさんや鈴木慶江さんが目玉とされていますが、正直霞んでいます。登場二回目にしてNYから衛星生中継の「大きな古時計」よりも、初登場歌手による黒部ダムからの「地上の星」の方がインパクトが甚大なのは、ドムの群れに一体だけ紛れたリックディアスの浮きっぷりくらいに明らかです。

 こうして無駄に期待を高めた上で、Псиは紅白歌合戦を閲覧しました。藤本美貴さんが歌い終わった後のMC中、ポーズを崩そうにもMCが長くて不可能なバックダンサーさんたちの表情や、持田香織さん(ex.Every Little Thing)の高音部でのあまりの顔の歪めっぷり、Gacktの紅白っぽくない唱法(というより溜めっぷり)等にアレな微笑を浮かべつつ、ついに中島みゆきさんです。
 冒頭、黒部ダムの概要がプロジェクトX風に紹介されます。折角だから「ぷろじぇくと えーっくすくすくす(残響)」とか入れちゃえば良いのに、と思うПсиを置いて、カメラは洞穴の中を写しています。狭苦しくも明るい洞穴の中に、不敵に佇む中島みゆきさん。そして、その歌の鬼気迫ることといったら
 カメラ目線の卑怯さ、氷点下2度で肩や腕を露出する度胸、全身から迸るオーラ、そしてその歌声・・・2番のBメロで歌詞を間違えてしまいましたが、はっきり言って全然気になりません。Псиは、ひさしぶりに紅白で感動・・・というよりも、背筋が凍るほどの何かを感じました。
 無駄なトークなどは一切無く、歌が終わったら中継映像もさっさと切り上げられてしまいました。ある意味、野球中継の間にリング級の呪い映像が挟まったものの、怖くて誰もコメントできない様な微妙な空気が流れたのでした。

 2002年の締めくくりとしてはあまりに強力だった今年の紅白歌合戦、他にも中森明菜さんのダーク実装風味な「飾りじゃないのよ涙は」や、順番も曲も悲しいくらいに噛ませ犬だったCHEMISTRYなど、見所も満載。Псиは図らずも満足のまま新年を迎えることができそうです。
 Псиは、今年一年Псиに素敵な楽曲を与えてくれた、すべてのアーティストに祝福を送ります。みなさん、よいお年を。

 ・・・え?衣装対決?なんですかそれは

 

平成14年12月14日 Be a gothic-X[ElDorado]

 というわけで土曜日恒例の「Be a gothic」、今日は第十回です。X回目にXが来なかったショックを未だに引きずっているため、もちろん今回も特別なことはありません。そんなに凹む様なことか、とついつい突っ込みを頭に浮かべてしまったヒトには、食後の楽しみにとっておいたデザートを、須らく誰かに食べられる類いの呪いを送信です。残ったお皿がせつなさを強調
 「Be a gothic」は、SHOXXの表紙に並ぶバンド名を見ても首を捻ってしまうくらいにヴィジュから離れているПсиが最近話題のヴィジュのアイテムをレビュー、どちらかというとFOOL'S MATE寄りだけど状況は一緒なヒトを次元の狭間に誘い込むコーナーです。
 なお、こうしたレビューはПсиの価値観に基づいているため、鵜呑みにすると咽を火傷するおそれがあります。次元の狭間がHIDEとTUSKがお互いの眼を舐め合っている様な場所か、それともムックの脳内世界の様な場所かは保証できかねます。できれば、幸せな最後を

 さて、ヴィジュの特徴と言って「服」、とりわけ「黒服」を挙げないわけにはいきません。うっかり普通の時に着用すると「お葬式?」「何か嫌なことでもあった?」「知り合いに良い医者が」という幻の三連コンボを受けかねない黒服ですが、この界隈にノータッチだった幸福だけど不幸なヒトにはどこで買ってくるのか皆目見当が付かないものなのかもしれませんね。例えて言うなら、一般のヒトはコスパの存在を知らない様なものです。
 かつて、それこそHIDEがTUSKと眼球を舐め合っていた頃の黒服ショップで、かつ今でも覚えているショップとなると、Псиは「S・E・X」くらいしか思い当たりません。間違っても一般会話には出て来ないこのショップでは、原色とエクステンション過多のHIDEの素敵コスチュームやYOSHIKIの姫ドレスなどを販売、当時FOOL's MATEを読んでいた方なら名前くらいは見たことがあるに違いありません。というか、当時から通い始め、今でも通っているアクセサリショップがあるのですが、素で名前を忘れました。Псиもだいぶ駄目です。

 現在では、そうした黒服ショップもたくさん出来ました。仮想新宿のOIoneの7Fや、仮想横浜のVIVREの4Fなどはまさにヴィジュ少女の聖地。ヴィジュ好きが放って置かないブランドが集合し、いわば一大暗黒空間を形成しているのです。
 もっとも、最近流行の黒服ショップといえば、ゴスならBlack Peace Now、ちょっぴりパンキッシュならh.NAOTO、ファンの年齢層が高めならJ.P.G、お蝶夫人並みのブルジョワジイ気分を満喫したいならMoi-meme-Moitieと、既に相場が決まっています。4つも並べましたが、ぶっちゃけて言えば後半二つは駄目押し。特にゴルチェに関しては、Buck-Tickのライヴ以外では着ない方が得策です。
 そうしたヴィジュ受けするブランドとヴィジュ系バンドとのコラボレーションは、実は結構多いです。前述の「S・E・X」はHAKUEIやJILSと組んで展開を行っていますし、去年のh.NAOTOとPlastic+Treeのコラボレーションライヴを覚えていらっしゃる方も多いことでしょう。
 という長い振りを経て、今日の「Be a gothic」では仮想横浜VIVREのB.P.Nへ行くとそこかしこに写真付きPOPが陳列されている「ElDorado」(読み方:えるどらど)を取り上げます。今回のアイテムは1stAlbumの「AULA」。・・・「Be a gothic」では、なるべく新しいアイテムを選ぶ様にしているため、作品的に2つもあとが続いている時点で微妙だと思ったのですけれど。困ったことに、Псиの行くショップにはことごとく「ElDorado」のCDがないという悲しい事情があった為、なんとか発見できた「AULA」をレビューすることになった次第です。文句は聞きません
 パッケージは上下が空いた紙のケースでプラスチックケースが包まれている、[ 封印廻濫(陰陽座) | refrain(高橋洋子) | LOVE BRACE(華原朋美) ]方式です(お好みで読み替えて下さい)。紙のケースを外すと、下からは濃い水色のプラスチックケースが。このパッケージ、お世辞抜きで素敵です。ライナーがブックレット型ではないのがアレですが、そんな欠点も忘れてしまいそうです。
 基本的に、中味が駄目なCDはジャケットがどことなくそれっぽい空気を出していることが多いです。そんな経験則から、このCDはたぶんハズレではないでしょう。だって、ほら・・・


 AULA[ElDorado]
 総合 :☆☆☆**
 楽曲 :☆☆☆**
 映像 :(判定不能)
 ネタ度:*****

 ・・・難しいです。正統ヴィジュな雰囲気を保ちつつ音は綺麗め、更には曲調に浮遊感・・・普通にレビューすればそんな感じなのですけれど。全体的に普通に素敵なのに、細かいところでかなり間違っています。それはたとえば「MISERY」の一番最後の声の抜き方とか、「マキャベリズム」のヴォーカルの入りとか、「Still I Believe」のハイトーンな声とかに感じたり。全部声起点なのがアレですが、だからといってヴォーカルが全般的に変というわけでもありません。
 激しい曲から綺麗さ溢れる雰囲気系の曲まで、演奏はかなり幅が広そうです。というよりも、ストリングスや尺八、鼓まで持ち出して、いろんな世界を模索している様が見て取れて、普通に好感が持てます。何より、そうした実験がそうそうハズレていないのもポイントでしょうか。
 とりあえず、伸ばした声を荒げて抜く唱法に見切りをつければ、それだけでも未来が明るくなると思います。

 歌詞がファンタジックか、ファンタジックが行きすぎて甘々かのどちらかという極端さを置いても、このアルバムは普通に面白いです。「Winds of Gold」や「in the Air」の頃のL'Arc・・・ほどの雰囲気を構築するには手が届いていませんが、このまま上手い具合に弾けたら、本当にどうなるか分からないバンドだと思います。とりあえず、土曜日の夜に聴いたら帰って来れない類いの雰囲気系でせつなさ炸裂路線に参入して頂きたい心境です。
 ともあれ、Псиは「ElDorado」を・・・と、今回はやけに短いと思ったら歌詞を引用してませんね。でも、いろんな意味で引用するには微妙なので、今回は歌詞の引用は見送りです。剃刀は送らないで下さい

 それでは改めて。Псиは、「ElDorado」の作品に祝福を送ります。ただ、これからも祝福を送り続けるかどうかについては、ヴォーカルさんの努力次第ということで。

 

平成14年12月7日 Be a gothic-IX[X JAPAN]

 というわけで土曜日恒例の「Be a gothic」、今日は第九回です。年末といえば第九ですが、もちろんそんなことは全く関係無く、今日も進行していきます。だったら引き合いに出すなと突っ込みを入れた方には、もれなくどれだけチャンネルを変えても紅白歌合戦な類の呪いを送信です。受信料は二倍請求
 「Be a gothic」は、ヴィジュの情報収集を怠けきっているПсиが最近話題のヴィジュ系アイテムをレビュー、「怠けるつもりはないけど疲れているから」と「ダイエットは明日から」方式のOLさんな怠惰っぷりを実装されてしまった方を奈落の底へ引きずり込むコーナーです・・・が、毎月頭の「Be a gothic」は既に解散しつつ、今なおヴィジュの界隈に影響を与えているバンドのアイテムを紹介しています。
 なお、このレビューはПсиの価値観に思い切り依存しているため、迂闊に丸呑みすると咽を火傷するおそれがあります。もしもそれで何も食べられなくなってしまっても、Псиは一切責任を負いかねますので、ご了承ください。

 さて、「Be a gothic-X」は「X JAPAN(以下X)」で決まりだろうと思っていたのですが、計算が違って月頭が十回目にならなかったので、九回目と半端ながらも「X」を取り上げることにします。もっとも、今日取り上げるアイテムは解散しているくせに発売されたばかり。そういう意味では丁度良かったのかもしれません。
 みなさんは「X」をご存知でしょうか。もしかしたら、ヴィジュ好きの方でも「Xは名前しかしらない」という方がいらっしゃるかもしれません。思えば、あの衝撃の解散は1997年。今年は2002年ですから、既に5年も経っていることになります。この界隈の5年は、世代の括りには充分な期間。LaputaやLa'crymaChristi、ROUAGEなどの名古屋系や、それ以降にヴィジュに興味を持ったヒトなどにとっては、おそらく「X」は文字通り「伝説」の存在か、あるいは出す曲出す曲バラードばかりのバンドに見えたことでしょう。

 さて、そんなヴィジュ好きが昔を懐かしむ様な話はさておきつつ、話題を唐突に変えてみます。みなさんは、ヴィジュアル系のルーツがどの辺にあるかご存知でしょうか。もっとも、この部分は研究者の趣味によって諸説ある、大変微妙なところ。そもそも、「ヴィジュアル系」の定義が曖昧だというのに、その起源をひとつに決めようという時点で無茶な話なのかもしれません。
 とりあえず、「AUTO-MOD」辺りが起源ということでこの界隈では落ち着いていますが、かつて大槻ケンヂさんが調査したところによると、少なくとも白塗りのルーツはもっと前らしいのですが・・・その辺りは、いずれ正式に文献が出るのを待つことにしましょう。何年先の話になるかはわかりませんけれど。

 この世で最初のヴィジュを探す、というのは果てしない泥沼に足を突っ込むのと同義なわけですが。そうした中で、世間的には大変メジャーで、かつ今日のヴィジュ系の基盤となったバンドといった場合、大方の意見は一致します。そのバンドこそが「X」です。抽象的で深すぎる歌詞、超絶技巧、激しいビートと歌謡曲的泣きの旋律の同居、YOSHIKIというプロデューサー/コンセプトメーカーの存在・・・現在のヴィジュの源流はXにある、といっても過言ではありません。
 もっとも、Xは「PSYCHEDELIC VIOLENCE」「CRIME ON VISUAL SHOCK」の2つをコンセプトに掲げていましたが、末期のXが発表した作品はバラードばかり。格好もYOSHIKIが姫路線を放棄したり、TOSHIが見掛け上普通のロッカーさんになってしまった時点で、VISUAL SHOCKもPSYCHEDELIC VIOLENCEも難しくなってしまった気がします。Псиは確実に刺される気もします
 そうしてコンセプトを投げてしまった上、寡黙さが祟って待望の新アルバム10曲の内6曲は既にシングル発表済みだったり、年末ライヴやツアーの構成が毎回ほとんど一緒だったりと、ファン的にも痛さが炸裂してきたところでXは唐突に終わってしまいました。末期だけ語るとすごいバンドですね、X。

 Псиは、上で挙げたアルバム「DAHLIA」は大好きですし、何よりTAIJIよりheathの方が好きというXファンの中では邪道の極みを走る存在ですけれど、そんなことは置いても、Xは永遠のリスペクトの対象です。たとえYOSHIKIが東京ドームのリハーサルを「カレーが辛いから」逃げ出したという話を聞いたり、ツアー某所で一曲目が終わった時にいきなりドラムを壊し始めて30分間待機の憂き目にあったりしても、ПсиはXを純粋に尊敬しています。疑っちゃ嫌です
 そんなПсиでも、さすがにXを盲信はしていません。ですから、解散決定後の商魂逞しい展開は正直辟易としていました。ПсиにとってのXは、97年末の解散ライヴで終わったのです。その解散ライヴ直後に紅白歌合戦に出ていたXや、hideの告別式で「Forever Love」を歌っていたXは既に別物です。むしろ、Псиは解散からこっち、脳内のXを盲信し始めたと言えるのかもしれません。脳内なら迷惑はかかりませんし。

 どうも思い出話は長くなりますね。ともあれ、そうして解散したXですが、その後もちょくちょくアイテムが出続けています。そして、最近もXの楽曲をTRANCE調にリミックスしたアルバムとDVD2作品(アルバムDAHLIAのクリップ集+解散ライヴ)が発売されました。後者は普通に美味しそうですが、問題はリミックス盤です。
 Xの持ち味といえば、次々と広がっていく多様な展開と美しい旋律です。対してTRANCEの持ち味といえば、パターンの少なさと無機質さ。展開が多いTRANCEなんてうざったいだけですし、そもそもTRANCEと言い切った時点でバスの四部刻みは確定です。つまり、Xの楽曲をTRANCEにするということは、Xの持ち味を悉く放棄するということに他なりません。
 ここまで説明すれば、Псиがこの「Trance X」に興味を抱いてしまったのも納得して頂けると思うのです。納得してください。というわけで、今日はこの「Trance X」を取り上げます。なお、この評価はПсиのXに対する評価ではありません。今回は、あくまでアイテムに対する評価だということを強調しておきます。
 と、闇夜の襲撃に対する予防線などを張ったところで、早速聴いてみることにしましょう。最初・・・ああ、この・・・イントロは・・・っ!


 X Trance[X JAPAN]
 総合 :*****
 楽曲 :☆****
 映像 :(判定不能)
 ネタ度:☆☆***

 プレイして2分で絶望が。最初は名曲「Silent Jelousy」で始まるのですが・・・イントロが、なんとシングル・アルバムと同じくピアノソロ。Псиの予想としては、ピアノ後に突然ロッテルダム(古いです)並みの激しいビートが・・・という、無駄に原曲に忠実な展開を期待したのですが。ピアノの後に流れたのは・・・
 ♪さいれ〜ん じぇ〜らすぃ〜 どんちゅ〜り〜み〜あろ〜ん
 ・・・
 ・・・
 ・・・アカペラでサビ。この辺りで炸裂する駄目さを感じていると、サビ最後の辺りに薄いシンバルが被さり、その後は普通にTRANCEが延々と。それにしても、TOSHIの声は感動的に合ってませんし、そもそもTRANCE・・・というよりもRAVEの基本である「メロディを分割してリード音で引っ張る」という手法を適用するには、Xの楽曲は難しすぎるか陳腐すぎるかどちらか。もしかしたらПсиが原曲に慣れてしまっているだけかもしれませんが、とにかく違和感ありすぎです。
 リミックス盤の醍醐味といえば、「おお、そう来たですか」というアレンジの妙を堪能する、という点があると思うのですが。このアルバムの場合、とりあえずリズムの騒ぎっぷりを聞き流しつつ、聞きなれたフレーズが来たら「ふーん」でおしまいというあまりに救われないアレンジの宝庫です。・・・RAVEの様な分かり易いTRANCEを、Псиが好まないからそう感じてしまうのでしょうか。

 それでもいくつかは面白いトラックがありましたが、そもそもこのアルバム、Xのファンが喜べるとは思えませんし、Xのファン以外が買うとは思えませんし、DJが買っても間違いなくクラブでは流れないでしょうし、ターゲットがさっぱりわかりません。あと、ベスト盤と見るとなんでもかんでも「Art of Life」を突っ込むのもよくないと思います。
 そんなわけで、はっきり言ってこれほどお薦めできないアルバムもありません。Псиは、ヴィジュと打ち込みの相性は良いと思っています。以前取り上げた「メトロノーム」はその点うまくやっていると思いますし。ただし、ヴィジュのバンドがRAVEを始めると何故か笑いの方向に走りがち(例:Little Vampire)という不文律が垣間見えるため、ムーヴメントを形成するにはまだまだ時間が必要でしょうけど。少なくとも今回のこのアルバムは、そうした未来のムーヴメントに対して良くも悪くも何の影響も与えないことは確かです。

 Псиは、Xの楽曲に祝福を送りつづけるとともに、もう終わったバンドなのにも関わらず脳内補完を阻害する諸々に対して呪いを送信します。この記事の後半部分とか

 


インデックスに戻る