◇昔のПсиニュース◇
(Псиニュースの過去ログです)

◇平成14年11月◇

11月30日:Be a gothic-VIII[cali=gari]
11月23日:Be a gothic-VII[Due'le quartz]
11月18日:米国で、ネットラジオ問題に一応の決着
11月17日:仮面ライダー龍騎 BookCD
11月16日:Be a gothic-VI[バロック]
11月09日:Be a gothic-V[メトロノーム]
11月02日:Be a gothic-IV[D=SIRE]
平成14年11月30日 Be a gothic-VIII[cali=gari]

 というわけで土曜日恒例の「Be a gothic」、今日は第八回です。「8」は逆さにしても「8」ですが、そんなバッファローマンとリングサイド解説役のロビンマスク&テリーマンしか喜ばないネタ振りはさておいて、今回も普通に進行していく所存です。もしも「フツウじゃイヤ・・・」と内田春菊先生の作品を勘違いした様なことを仰る方には、もれなく目にする時計すべてが25時間表記に見える類の呪いを送信です。言い訳無用
 「Be a gothic」は、X-JAPAN終了の頃から「SHOXX」を読むのも止まってしまったПсиが最近話題のヴィジュ系アイテムをレビュー、LUNA SEA終幕までは「SHOXX」を読んでいたという似たり寄ったりな境遇のヒトに、あることやないことを触れ回るコーナーです。
 なお、このレビューはПсиの価値観に依存しているため、迂闊に評価を鵜呑みにすると咽を火傷するおそれがあります。フィルタリングはご自分で

 さて、ヴィジュのアイテムについて回るものといえばプレス数の少なさです。そもそも、初版が2,000枚だの二版で3,000枚だのといったプレス数は普通な部類です。むしろ、初版が完売する前に廃盤扱いになるアイテムも、この界隈では珍しくありません。
 しかも、そうしたプレス枚数の少なさを逆手に取って、「XX枚限定生産」などと商魂逞しく言い張るアイテムも数多く存在。無闇に豪華そうなパッケージに、宣伝文句によるレアっぽさを付加されることで、また騙される不幸なファンがココロを閉ざしていくのです。
 ・・・ちょっと私情が入ったので軌道修正します。雑誌で露出が始まったバンドなどは、上記のプレス数程度ではすぐに完売してしまいます。ПсиもLa'crymaChristiの最初のシングル「Siam's Eye」の3rd Pressを買いに行ったら発売後一ヶ月足らずなのにどこへ行っても完売状態。結局、暫く後の4th Pressを待ってようやく購入できたのでした。

 現在もヴィジュ系アイテムのプレス数が似たようなものなのかどうか、Псиにはちょっとわかりません。しかし、新星堂など大手のショップに流通され、雑誌やネットの影響ですぐに全国区で名前が広がる恵まれた環境だとはいえ、ヴィジュも所詮はインディーズ。売上予測なんて立つわけがありませんし、大風呂敷はレーベルの寿命を縮めます。きっと時代に関係なく、プレス数は少数を維持していくのに違いありません。
 同じアイテムでも、版が違うと内容が変わることがあります。前述の「Siam's Eye」は、もともと「S.E.A.」と「Siam's Eye」の二曲が収録されていたのですが、3rd Pressからは「White Period.」という曲が収録されました。この曲はLa'cryma史上に残る名曲として現在でもライヴで演奏される上、サビはオーディエンス全員で合唱したりと大変盛り上がる曲なのですが、この「Siam's Eye」というCDは現在では廃盤。音源が欲しい場合は、二本組みのライヴビデオを買ってこないといけません。曲自体は本当に素敵ですし、アイテムを持っている古参のファンには良いですけれど、そんな曲がライヴの定番曲なのは、一体どうなのでしょう

 といったところで、今日取り上げる「cali≠gari」(読み方:かりがり)です。「cali=gari」は早くから取り上げようと思っていたのですが、どれを買って良いのかわからない為、今回までずるずると伸びてしまいました。
 「cali=gari」のコーナーへ行って目に着くのは、「第X実験室」というタイトルです(Xには数字)。適度に穴が空きつつも「第7実験室」まで陳列されているため、「ロード」並みに壮大な連作だったらどうしようと思うと、手を出すのを躊躇してしまうのでした。
 でも、いつまでも躊躇していても仕方がありませんし、逃げていても土曜日はやってきます。結局、一番新しいと目されるアイテム「「第2実験室」 改訂版」を購入しました。2,500円で8曲入りという素敵なミニアルバムっぷりも然る事ながら、帯にある

  • 中期の代表曲を含む「第2実験室」に新曲「夏の日」を追加した再構築アイテム
  • メジャーデビュー後最初のインディーズ作品
  • 1996年8月17日:オリジナル版発売

 メジャー後最初のインディーズ作品・・・?そんな不思議なコトバに惹かれて、購入してみることにしたのでした。CDのケースを開けた途端にジャケットサイズより小さくてツメに引っかからないペラものの紙サイズ的には半端ながらとにかく小さすぎるライナーノートがひらひらと落下。それを拾う内に、Псиの中では既にマイナスの情念が。
 でも、パッケージングに腹を立てていたら、ヴィジュの世界は歩けません。気を取り直してCDをセット、再生です。


 「第2実験室」 改訂版[cali=gari]
 総合 :☆☆☆☆*
 楽曲 :☆☆☆**
 映像 :(判定不能)
 ネタ度:☆****

 なんてアクの強い。「ギロチン」「嘔吐」といったヴィジュ的なタームから連想されるカオスさ加減全開の楽曲・・・と思ったら、それは前半だけ。後半は清涼感が溢れ、音の運びがどことなく中華っぽい曲が続きます。正直、cali=gariにムック的な先入観を抱いていたПсиには、この後半パートはとても意外でした。
 前半パートは、まさに混沌の嵐です。バロックも顔負けの謎唱法、覆い被さる語りフレーズ、ハイテンションな演奏、そしてダークな歌詞。とりあえず、歌詞を見てみましょう。このCDの二曲目、「ギロチン〜Test Pattern.#1〜」です。

ギロチンが落ちる・・・

アンナオワリカタダケハシタクナイ

ドウカボクダケハタスケテクダサイ

ギロチンが落ちる・・・

 これだけです。鉄を打つ様な音が響いたと思ったら、突然淡々と「アンナオワリカタダケハシタクナイ」というコトバが繰り返され、またも唐突に激しい刻みに謎シャウト。以後、静と動を繰り返しつつ、2分ちょっとで曲自体が終わり。分かりやすく言えば、LUNA SEAの「SHADE」から楽曲のドラマチックさやメロディを抜いた感じでしょうか。
 そんなカオスな雰囲気も4曲目まで。5曲目は車の中でライヴ録音という無駄に気合の入った(注:誉めてます)、とても素敵なバラード。そして、この曲から後は一気に爽やか路線へ転向です。Псиがとても気に入った曲、「オヤスミナサイ」の歌詞を引用してみましょう。

水面下 静かに語ろう
優しい目をした僕の恋人
少し照れて目を逸らしながら
いつだって同じ心の二人

水面下 密かに遊ぼう
懐かしい体 僕の恋人
温かい口づけの中なら
いつだって同じ心の二人

無意味な視線の閉じ箱は何?
つまらない空気は殺しましょう

二人だから怖くはないよ
「暗い」「狭い」「遠い」未知
肩並べ何処までも行ける

世界は眠る 僕らを忘れ
僕らは歩く 世界を捨てて
良く出来た作り笑いを
浮かべる友達へ
最後の言葉を告げよう

「オヤスミナサイ。」

 本当に「ギロチン」と同じヒトが歌詞を書いたですか。先程とは打って変わって、曲の雰囲気がバファリンの主成分と同様の感情で満ちています。この優しさにSHAZNAの曲の雰囲気を思い出したПсиは、もう駄目なのかもしれません。と、そんな話はともかく、バファリンが生理的に飲めない方にはごめんなさい
 ギターリフもメロディも唄も、とても印象的で・・・うう、Псиには「優しい」としか表現ができません。さっきまで「アル朝、僕ハ君ヲ吐イタ」と歌っていたバンドとはとても思えません。そんなギャップにくらくらです。

 Псиは、崩れた曲も優しい曲も、どちらも大好きになれそうです。そして、苦しい程のギャップに浸れるこのミニアルバムは、Псиにとってはかなり素敵です。ただ、ある程度場慣れしていないヒトが聴くと、最初で拒否反応を起こしてしまうかもしれません。また、最初の混沌っぷりが受け入れられたとしても、後半とのギャップに苦しんでしまう方も少なくないでしょう。
 他のアイテムがどうなのかはまだわかりませんが、今回のアイテムに関しては玄人さん、および無駄に背伸びをしてみたい方にお薦めします。

 最後に。ライナーの頭で、B-PASSの諸橋さんが解説を書かれているのですが。

そして本作『第2実験室 改訂版』は、旧メンバー(=第4期カリガリ)によって、96年8月17日にリリースされたデモ・テープ『第2実験室』を、現メンバー(=第7期カリガリ)の手でアレンジを大幅に変え、録り直したミニ・アルバムである。

 ・・・第7期って。随分と昔から名前を聞いた様な気がしていましたが、その実純粋にキャリアが長かったんですね。納得。

 Псиは、「cali≠gari」の楽曲に祝福を送るとともに、天使のПсиは頭痛薬と縁遠いので、バファリンが本当に優しさいっぱいなのか、教えて頂きたい所存です。

 

平成14年11月23日 Be a gothic-VII[Due'le quartz]

  というわけで土曜日恒例の「Be a gothic」、今日は第七回です。数字的には縁起の良さそうな数ですが、だからといって特別なことをするわけでもありません。←ここまで読んで舌打ちをしたヒトには、舌打ちをする度に左腕が1cm伸びる類いの呪いを送信します。あがいても無駄
 「Be a gothic」は、ヴィジュ系情報から良い具合に遠ざかっているПсиがヴィジュ系アイテムをレビュー、ジャケットの顔が好みだけど名前がわからない為に購入できないアイテムがあって困っているヒトに間違っているかもしれない道標を与えるコーナーです。
 なお、こうしたレビューはПсиの価値観に大きく依存する為、鵜呑みにすると咽の奥を火傷する可能性があります。ご利用は計画的に

 さて、ヴィジュの特徴のひとつに読めない名前があります。曲名やアイテム名が読めないだけならまだしも、バンド名やメンバー名が読めないというせつなさ炸裂な場合も多々有り、ヴィジュ好きは日夜情報収集に明け暮れるわけですね。
 一時期、読めないにも程があるバンド名が流行したことがありました。聞けば納得はするけれど、素で読めるヒトはまずいない・・・そんなバンド名です。どんなにすごい名前なのか、一例を挙げてみましょう。

[初級問題]次のバンド名の読みを平仮名で書きなさい(一問5点)

  • L'luvia
  • Kyo-Mai
  • nuvo:gu
  • Guniw Tools
  • 美流沙女

[中級問題]次のアイテム名の読みを平仮名で書きなさい(一問10点)

  • 「le 7e Art」[KiLHi+ICEの1st]
  • 「禊」「檄」「璞」[GARGOYLE初代三部作・三種とも正解して得点]

[上級問題]次の平仮名で書かれたバンド名を、正しい表記で書きなさい(一問30点)

  • だびで・しと・あえる
  • あぶのーまる・きゅーぴー

 結構時代が偏っている為、最近のヴィジュ好きさんには難しいかもしれません。ちなみに50点以上取れた間違った生き様を刻んでいる方は、Псиがアレな態度で誉め称えます。
 初級は割と簡単です。「Guniw Tools」の「s」を発音するかとか、「Kyo-Mai」の「Mai」をどう発音するかがトラップになりますが、引っかかるとしたらそれくらいです。答えを列挙すると、「じゅびあ」「きょうまい」「にゅーぼーぐ」「ぐにゅーつーる」「びるしゃな」。読めるのが前提で解説しましたが、読めない方は正常なので誇って良いです
 中級は、フランス語好きさんや漢字好きさんは苦にならないかもしれませんね。答えは「せってぃえむ・あーる〜だいななのげいじゅつ」と「みそぎ・ふれぶみ・あらたま」です。上級は・・・本来なら「これを読め」にするべきだったのでしょうけれど、あぶのーまる・きゅーぴーがどうしても思い出せません。ちなみに、「だびで・しと・あえる」は「Da'vidノ使徒:aL」・・・知らなきゃ分かりません。「あぶのーまる・きゅーぴー」は、たしか「AB-No.0+QP」とかだった気がしますが・・・解る方、どうかフォローをお願いします。その内こっそり直します
 とりあえず、上級の論外な読みのバンドは置いて、ヴィジュの界隈に身を置くと横文字をフランス語っぽく発音する能力が身につきます。今でもオスカル様が私の憧れという方は、LAREINE(注:もう解散しています)辺りからこちらの世界へどうぞ。こんな言い方はしましたが、特に止めもお薦めもしません

 さて、今日取り上げるバンドは、似非フランス語習得者の練習問題として最適な、「Due'le quartz」(読み方:でゅーる・くぉーつ)です。これで「ふたつの水晶」という意味も押さえておけば、生きて行く上で全く不要なフランス語知識をまたひとつ追加です。
 ヴィジュ系ショップへ行ったところ、「LAST TITLE」というシングルと「BEST ALBUM」というアルバムがを発見。統一感のあるジャケットと、この二枚がベスト盤と最新シングルという美味しさから、両方とも購入することを決めました。
 ちなみに、「LAST TITLE」は二曲入り\2,000。Псиの知る限り、TOP10に入る程のコストパフォーマンスの悪さです。もっとも、アイテムとして出来が良ければ文句はありません。価格二倍分のアドヴァンテージを覆すのは難しいとは思いますが、きっと面白いCDの筈・・・と強引に信じ込み、CDを再生してみました。


 LAST TITLE[Due'le quartz]
 総合 :☆****
 楽曲 :☆☆***
 映像 :(判定不能)
 ネタ度:*****

 えらく正統派なヴィジュ系です。泣き系のメロディ、語り、印象的なギターフレーズ・・・名古屋世代を生き抜いたヴィジュ系ファンは、そのまま入り込めそうな。一曲の中で多様な展開があるのですが、展開が変わっても唄い方が一定なので、要所要所の小ネタっぷりが活きていない様な気がします。

 あの名古屋世代以前からヴィジュを好いていたヒトは、音源に妙な響きを感じたことがあると思います。もっとちゃんと言えば、ギターやベース、ドラム等で構成されるバンドの音で空間が埋まりきっていない、変な空間の存在です。これは、バンドの演奏技術というよりもスタジオや機材、レコーディング時のスタッフの仕事具合に依存する部分なのですが。
 最近「Be a gothic」で取り上げたアイテムでは、こんなスカスカさを感じることはありませんでした。その為、Псиは懐かしさに打ち拉がれています。

 このシングル、クレジットは2曲のみですが、4トラック入っています。もっとも、クレジットされていない2曲はインスト曲。インスト曲の内、マリンバだかオルゴールだか歪み過ぎてわからない音による冗長なトラックを事前に聞いていれば、ПсиはこのCDを買わなかったに違いありません。メンバーが全く噛んでいないであろうトラックなのに、ちょっとあんまりな出来です。

 みなさん、「上海な曲」と言ってどんな曲を思い浮かべるでしょうか。このCDには「シュガーレス・シャンハイ」という曲が入っています。

絢爛花火のよう
交わりの欲情
阿片曇りの夜
夢見がちな嘘

オルガズム弾む
次の異国人
マドンナ気取りの
誘惑の眼差し

私が少女の頃町にはとってもキレイな緑がありました
十一歳になったある日、青い瞳をした兵隊さん達がたくさん町にやって来ました
そして気まぐれに大人の女の人を何処かへ連れて行きました
私はこの頃植民地という言葉を覚えました
私は十九歳になりました
町はいつの間にか綺麗なネオンの輝きに包まれ、人々は胸を踊らせ宙を舞う
札束のように舞い上がりました
そしてセックスと煙にありつくために西洋人にこの国の魂を売りました

気がつくと私は街を彷徨っていました
ついさっきのことも思い出せず頭痛に苛まれ吐き気を催し何度も幻覚を見ました
ただ覚えているのは髪に染み付いた臭いの原因と誰かの温もりだけでした
ふと目を開けるとそこは生まれ育った我が家でした
ベッドに縛り付けられた私は何度も何度ものたうちまわりました
しばらく経ったある日目を覚ます母の子守り唄が聞こえてきました
そして赤ん坊のように泣きじゃくりました

言葉もろとも儚い
途上の空の下
行き交うモダンな街はぐれ
僅かに眠る誇りの欠片たち
彷徨う

きっと生まれた街の
流儀もかなわない
華やぐ蠢惑的夜層で
見慣れるがまま路上の夢心地、甘い罠
落ちてゆく

 最初から時代考証が微妙そうですが、語り部分に入ると主語も内容も微妙です。というか、主観で情景描写をしている割には、中味の無い・・・ごほごほ
 ちなみに、Псиにとっての「上海な曲」といえば、橘いずみさんの「上海バンドネオン」。

虫ケラは闘う自由さえもない
翡翠買って余裕あればキャッツアイ
自転車泥棒逃げ足かなわない
奪い合い 騙し合い 助け合い 上海

シルクロードが運んだのは難題
虫歯だらけ痩せた男の礼拝
サーカスの女曲芸競い合い
笑えない 踊れない 意味がない 乾杯

あなたを包む夜の天使は私
甘くとろけて絡みつくのは私
空に銀河のナイショ話止まない
やるせない 離れない 終わらない 真夜中

街の灯を集めてるあなたの瞳
月あかり独り占めあなたの瞳
風に吹かれて川べりを歩きたい
感じたい 叫びたい 抱かれたい 不想睡覚

異国の神に目撃されてたロマン
憧れたってきっと待つだけの愛人
狭い市場で長い行列に我慢
いにしえにここでめぐり逢ってた予感
魅力的 刹那的 歴史的 素敵

あなたを包む夜の天使は私
甘くとろけて絡みつくのは私
空に銀河のナイショ話止まない
やるせない 離れない 終わらない 真夜中

街の灯を集めてるあなたの瞳
月あかり独り占めあなたの瞳
風に吹かれて川べりを歩きたい
感じたい 叫びたい 抱かれたい 不想睡覚

この広い海は誰のものなの
西の空焦がす夕陽は誰のもの
どうか どうか 幸せになれますように

 大サビまで抜粋です。曲も相まって、Псиが上海と聞いた時に感じる憧憬にも似た様な甘い感じが、この上なく素敵に表現されています。前述の「シュガーレス・シャンハイ」は、大昔の布袋寅泰に通ずるサイバーさが漂う曲調。・・・それで上海を描くなら、ブレードランナー路線の方が良かった気がします。

 ちなみに、ベスト盤「BEST ALBUM」を聞いてみたら、もっとПсиには合いませんでした。曲調の変化は面白いのですが、それが全然活きていないこと、加えて終わりやイントロに余計な音が付いていて鬱陶しいなど、少なくともПсиは好きにはなれません

 さて、Псиはこれらのアイテムを買った時はすっかり忘れていたのですが、「Due'le quartz」は既に終わっています。後から思えば、「LAST TITLE」というタイトルと、「BEST ALBUM」が同時発売という展開で気付けという話ですけれど。
 解散した後も影響を残したバンド、という月頭「Be a gothic」のコンセプトにはとてもそぐわないですし、このままスルーするにはお金をかけすぎたしで、結局取り上げることにしました。悪い評価を書き連ねるのもどうかとは思いましたが、わざわざ地雷を残しておくことはないとも思ったのも事実です。というわけで、参考にされる方は参考にして下さい。

 Псиは、初のハズレに少なからずショックを感じているのと共に、せめて解散したかどうかの情報だけはチェックしようと思います。

 

平成14年11月18日 米国で、ネットラジオ問題に一応の決着

 むしろ、電波中毒です。こんばんは、Псиです。Псиの生活にラヂヲは欠かせません。正確に言えばラヂヲ番組を収録したテープが欠かせないのですが、少なくともあまり棲み処にいない現在のПсиには、テレビはちょっと足回りが重いのです。それに、Псиの様になんとなく世間的にはくすんだ存在には、色つきで華やかなテレビではなく、映像はすべて脳内補完のラヂヲの方がお似合いなのです。
 だからといって、Псиは大沢悠里のゆうゆうワイドを朝から聴くほど達観はしていません。せいぜい夜のFMか深夜のAMでアレな微笑みを浮かべるくらい。・・・なんだか、とても寂しくなってきました
 自分起点の北風に震えるПсиは、無理矢理方向転換です。

 みなさんは、ネットラジオを御存知でしょうか。かつて、一流日記のゴトウさんは、過去の日記(4月18日)でネットラジオを次の様に紹介していました。

ネットラジオというものがありまして。

どういうものかと言うと、インターネット上で、ラジオのようなことができるんです。(説明終了)

 ・・・付け加えることは何もありません
 そんなネットラジオは、発信の手軽さと受信媒体の多様さから、2000年に米国で流行。7月には個人インターネットラジオ局が15,000件に達していたそうです。もちろん、ラジオのDJが普通に恰好良さそうという動機や、普通はかけるのを躊躇われるレコードに針を落としまくる「オレ番組」を放送したい、などの動機は万国で共通するところでしょうし、そんな欲求が果たされる手段があるなら誰もが手を出すところでしょう。
 しかし、記事によれば

 インターネットラジオ局が増えている背景には、既存の商業ラジオ局が流す音楽が自分の趣味に合わないという不満がある。米国ではそれぞれの地域に多くのラジオ局があって、日本とは比較にならないほど特色ある番組を放送している。しかし、最近は大規模資本による系列化が進み、以前のような特色を打ち出せなくなってきた。

 という背景があったそうです。アメリカでは、ラジオの影響力は半端になりません。なにしろ、N.Y.だけで80以上のラジオ局があると言われています。ちなみに、人口が倍近い東京のラジオ局の数は20局程度・・・人口比で考えると恐ろしいですね。
 そんなラジオの国で広まったネットラジオのコミュニティは、ある日突然壊滅的な打撃を受けます。平和な世界に訪れたカタストロフィ、その鍵は楽曲使用料でした。
 米国では、地上波ラジオの放送の場合、作曲家に対して楽曲使用料として売上高の約3%を支払う義務があるそうです。しかし、プロモーションの面を考慮して、レコード会社やアーティストに対しての支払義務はありません。これはあくまでも地上波ラジオの場合で、ネットラジオになると大きく話が変わります。
 1998年、「デジタルミレニアム著作権法」という名前を間違ってしまった感の否めない法案が採択されました。これは、デジタルメディアを通じての楽曲の配布を行った場合、レコード会社は楽曲の使用料を受け取る権利がある、とするものです。デジタルメディアでは音質が劣化せず、従って売り上げに大きく影響が出る、というのがその根拠ですが・・・こんな主張をしているのは、もちろんRIAA(米国レコード協会)です。

 その後、従来の著作権法をタテに、売り上げの3%を主張するインターネットラジオ側と、売り上げの15%を主張するRIAA側で完全に意見が対立。結局、「1曲1人辺り0.14セント」という線で落ち着きました。どういうことかというと、楽曲1曲が1人のユーザの元に配信される度に0.14セント課金する、ということです。
 さらに、「デジタルミレニアム法が制定された1998年10月まで遡って支払う」ことも一緒に決まったため、小規模なネットラジオ局は大打撃を被りました

 この「1曲1人につき0.14セント」が決定するとどうなるか? CARPの報告書に反対するために結成された団体「SaveInternetRadio」の試算では、数人で運営している独立局(インターネットラジオ局の8割以上がこのタイプという)の場合、1時間で1,000人のリスナーに15曲を配信したとして、1時間21ドル(0.14セント×15曲×1,000人)が徴収される。さらに1998年10月まで遡り、また施行まで放送を続けたと仮定すると、徴収される使用料はなんと55万2,000ドル(約7,200万円)に達する。これは当初RIAAなどレコード業界側が提案していた“収益の15%”よりはるかに多く、またほとんどの独立局にとって収益の数倍に上る額となり、インターネットラジオ局の運営そのものができなくなってしまう。

 今までは好き勝手にオレ番組を放送していたのに、ここへ来て突然料金を課せられてしまいました。番組の継続はもちろん、今までの分に関しても料金を支払わなければならなくなった為、ネットラジオ局は一斉に沈黙せざるを得ません。結果、RealNetworksなどのストリーミング関連企業や放送局、リスナーはこれに猛反発しました。
 そうした中、米国議会図書館著作権局が著作権料の再考を行い、その結果としてインターネットラジオでの楽曲使用料は半額の0.07セントになりました。ですが、これでも高いとユーザは反発(前述の試算を見ると、半分になったところで負担は大きすぎます)。さらに「これでは安すぎる」とRIAAも不満を明らかに終わることのない泥試合の様相を呈してきました。

 しかし、10月に「小規模Web放送局に対しては、1998年10月にまでさかのぼって年額500ドルの著作権料を課す」とする暫定措置が発表されたことで、(決定事項ではないものの)ユーザ寄りの結果に関係者も安堵。そして今日、ついに一応の決着が着きました。要点を抜き出すと、こんな感じです。

  • 小規模Web放送局の楽曲使用料の支払い期限を12月15日まで延期
  • 非営利目的組織は、さらに6カ月の支払い猶予期間が与えられる
  • その期間で、各著作権保有者と交渉を行う機会を得る
  • 具体的な料金は明らかになっておらず、先の暫定措置案を出したSoundExchangeがミュージシャン/レコード会社の代理として値引き交渉を行う

 ただ、SoundExchange社は先の暫定措置を最終決定させる方向で動いている様ですから、ここへ来てとんでもない金額を課せられることはなさそうです。
 この決定には、各所から喜びと賞賛の声が挙がっています。なにしろ、ネットラジオ開局に関する敷居が一気に低くなった上、今回のことでネットラジオ局も法で認められた存在になったのですから。

 以上、議論を重ねて幸せな結果を手に入れた国のお話でした。日本でこうした結論が出るのは、かなり先のお話でしょう。
 日本では、(非営利であれば)JASRACに年額10,000円を支払うことで、著作権はクリアできます。しかし、それだけで安心してしまうと、間違いなく日陰の人生モードです。楽曲を利用するためには、著作権とは別に、そのCDを発売したレコード会社と独自に交渉を持ち、そこで提示される使用料を払わなくてはなりません。この辺の、著作隣接権とかの話は真紀奈さんにこっそりお願いするとして(著作権講座で著作隣接権を取り上げる予定がありそうですので、そちらに勝手に期待です)、とにかくアーティスト(作曲者)に対するJASRACの様な一括窓口が、レコード会社に対しては存在しないことが問題です。また、価格もレコード会社によってまちまち。恐ろしく高額そうなことだけは予想できますが。
 そんなわけですから、現在はねとらじさんなどのサーヴィスを利用してネットラジオ番組を放送する場合、著作物の無断使用は禁止となっています。もっとも、そこで強行してしまうヒトもいますが、GIFのロイヤリティ問題の様に、ある日突然5,000ドルを請求される様な自体を覚悟しておく必要があります(サーバ運営者さんにも確実に迷惑がかかりますので、こうした強行は自分だけの責任で解決できる範囲を超えたいざこざを呼ぶでしょう)。

 日本にネットラジオの仕組みが入ってきてから、一時期方々で流行し、しかし著作権上の問題などから音楽が使えなくなると、潮が引く様に騒ぎは収まりました。
 今では廃盤となったレアなゲームミュージックの音源や、アニメ主題歌やカラオケ用CDの違うヒトが歌っているアレなカヴァーなど、通常のラジオ番組ではかかりようもないトラックが、各地から発信されていたのも、今は昔の話です。
 ネットラジオの開設についての総合的な窓口を期待するのも然ることながら、その際にはどうかユーザの議論を無視しない様に実現されることを、Псиは願ってやみません。

 Псиは、音源の使用許可取得に奔走するネットラジオ局のヒトに祝福を送るとともに、早すぎたネットラジオ専用端末哀悼の意を表明します。

 

平成14年11月17日 仮面ライダー龍騎 BookCD

 「Be a gothic」以外の更新はひさしぶりです。こんばんは、Псиです。8月は10回しかニュースを更新しなかったのですが、下手をするとその記録を楽々飛び越しそうです。とりあえず、「いい加減更新しただろう」とこのページを御覧になった方がまた幻滅してしまわない様に、Псиは頑張ってみるのでした。
 さて、昨日の「Be a gothic」の為のCDを買いに行った時のことです。行きつけの仮想某所のCDショップでヴィジュのコーナーを物色しようとしたところ、ヴィジュ棚が撤去されていました。どういうことかと店内を彷徨っていると、片隅にこれでもかと積まれたヴィジュCD。LUNA SEAからPlastic+TreeからFANATIC◇CRISISから、有名なものから今初めて名前を見た様なマイナーなものまで、様々なCDが一緒くたに積まれていました。
 その様にヴィクトル・ユーゴー並みの無情感を感じつつ、今度は無目的にショップ内を彷徨い始めました。すると、そこはいつしかアニメコーナー鎧ものが大好きなПсиが聖闘士星矢DVD-BOXの価格設定に頭を抱えていると、そのCDが目に入ったのでした。

 そのCDとは、「仮面ライダー龍騎ブックCD」。要するに、CDと分厚いボール紙で作った様な最近の児童用絵本を抱き合わせたものなのですが。龍騎関連のCDはすべてavexから出ているため、何やら不穏なシールが貼ってあります。そう、CCCD告知シールです。・・・それがavexの方針とはいえ、龍騎のCDにCCCD告知シールというのはなんとなくアレな感じがするのですが。少なくとも、子供は無意味にショックを受けそうです。
 さて、そんなことはさておき、帯の文字を見てみましょう。帯にはこのブックCDの売りがひらがなで列挙されています。

  • ごうかえほんで、ライダーのひみつだいこうかい!
  • ナイトとゾルダがうたっているぞ!
  • しゅだいか、エンディングがはいってるぞ!
  • ぜん6きょく(からおけ2きょく)いりだぞ!

 ・・・どうして子供向けのこうした文は無駄に偉そうなのでしょうか。と、問題はそんなことではありません。二行目です。「ナイトとゾルダがうたっているぞ!」これです。龍騎のオープニング「Alive A life」が大好きなのにも関らず音源を所有していなかったПсиは、この際だからとこのCDを購入することにしました。万が一ネタ的に美味しくなかったとしても、「Alive A life」が充分美味しい、という判断でした。
 棲み処に帰って、早速再生してみます。CCCDなことをすっかり忘れてPCで再生しようとしたトラップなどを掻い潜りつつ、一通り聴いてみることに。このCDの収録曲は以下の通りです。

  1. 「Alive A life」 うた:松本梨香
  2. 「Lonely Soldier」 うた:秋山漣(松田悟志)
  3. 「消えない虹」 うた:北岡秀一(涼平)
  4. 「果てなき希望」 うた:きただにひろし

 つまり、「Alive A life」後二曲が本命です。ひとまず、絵本を見ながら「Lonely Soldier」というイメージに合い過ぎなタイトルの曲を待つことにしましょう。
 絵本を開けると・・・なんだか小さな紙が入っています。

◆訂正とお詫び◆

2ページの目次において、「ETERNAL ARCH〜消えない虹〜」は、「消えない虹」の誤りです。訂正して、お詫び申し上げます。

 だから、訂正とかは無意味に凹みますって。しかも、曲名変更・・・どんなタイミングで何が起こったのか、とても気になるところです。
 そうしている間に、「Lonely Soldier」が始まりました。曲自体は・・・普通。唄自体も普通に恰好良さげです。avexっぽい打ち込みビート全開なのはCD全体に共通したことですが、漣さんはうまくその曲調を味方にできている様な。歌詞もタイトルこそアレですが、「君」リスペクト満載な辺りがいかにも漣さんっぽいです。
 さて、その次の北岡先生による「ETERNAL ARCH〜消えない虹」ですが・・・どうやら、アレな期待はこちらで昇華するべきだった模様です。妙に跳ねるAメロの唄い方、全体的に打ち込みと微妙に合わない高めの声・・・何から何まで不思議テイストに溢れたトラックです。とりあえず、このトラックを聴く限りでは先生はアップテンポの曲は唄わない方が良さそうです。
 そして、エンディングの「果てなき希望」・・・初めて全曲聴きましたが、イントロとサビ以外がかなりアレな印象を受けました。・・・これはПсиの耳が毒されてしまったのでしょうか?

 傷心のПсиは、絵本をちゃんと見てみることにしました。絵本は次のような構成になっています。

  1. 目次
  2. 仮面ライダー龍騎のひみつ
  3. 仮面ライダー龍騎のうたをうたおう!(「Alive A life」歌詞)
  4. 仮面ライダーナイトのひみつ
  5. 仮面ライダーナイトのうたをうたおう!(「Lonely Soldier」歌詞)
  6. 仮面ライダーゾルダのひみつ
  7. 仮面ライダーゾルダのうたをうたおう!(「消えない虹」歌詞)
  8. 仮面ライダー龍騎のうたをうたおう!(「果てなき希望」歌詞)
  9. 仮面ライダーシザースのひみつ
  10. 仮面ライダーライアのひみつ
  11. 仮面ライダーガイのひみつ
  12. 仮面ライダー王蛇のひみつ

 「ひみつ」と銘打っている癖にわかりきったことしか書いていない点を除けば、大変普通な構成です。どうしてこの7人なのかは微妙ですが、そこはそれ、オトナの事情というやつがあるのでしょうひとりだけ口紅が光る王蛇のページをめくると、そこは最終ページです。

さいごにいきのこるのはだれだ!?

たたかわなければならない、ルールをあたえられた、仮面ライダーたち。龍騎は、さいごまでいきのこることが、できるのだろうか!?

 ・・・取り上げられている7人の内、大半がもういないのですが、その辺はどうお考えなのでしょうか。

 Псиは、取り敢えずネタにはなった仮面ライダー龍騎ブックCDにやっつけ仕事っぽい祝福を送るとともに、ヴィジュアイテムは普通の棚に陳列し直す方針に決めたらしい仮想某所のCDショップにわんわん泣きながら呪いを送信します。
 ・・・ついでに、PCでの再生が大変鬱陶しいので、CCCD(というかSCD)にも呪いを。

 

平成14年11月16日 Be a gothic-VI[バロック]

 というわけで土曜日恒例の「Be a gothic」、今日は第六回です。最近は「Be a gothic」しか更新されていない気がすると不意に思った方には、気がつくと足の爪が全て深爪になっている類いの呪いを送信です。泣いても無駄
 「Be a gothic」は、ヴィジュの情報収集を着実に怠っているПсиが最近話題のヴィジュ系アイテムをレビュー、ヴィジュ系アイテムのコストパフォーマンスの悪さに辟易としている方の足をそっと薙ぎ払うコーナーです。
 ただ、このレビューはПсиの価値観に依存する為、転んだ先が桃源郷か奈落の底か、ただのリノリウムの床かの保証はしかねます。鵜呑みにして咽を火傷されましても、Псиは生暖かく真顔で見詰めることしかできませんので、ご了承下さいませ。

 出先ながらに時間が無闇に余っている時、みなさんはどの様に時間を潰すでしょうか。会員制ではないネットカフェで匿名性を良いことに悪事の限りを尽くすとか、あまつさえその状況で「ハッカー気取りで罪を感じない」とLUNA SEAな歌詞を呟いてみたりするのも、それはそれで面白そうです。でも、ネットカフェに行くお金すら無いとしたら。Псиのおすすめは、CDショップのヴィジュ系コーナーへ行くことです。
 ヴィジュ系コーナーで無意味にCDのジャケットを見ていると、簡単に時間が経過します。何しろ、美麗なものからシンプルすぎるもの、グロテスクなものまで多種多様。美麗なジャケットを見てデザインの参考にするのも良いでしょうし、アレなジャケットを見ながらそっとほくそ笑むのも良いでしょう。ただし、ヴィジュ系コーナーは淑女と淑女の社交場である場合が多いため、迂闊なアイテムを持って迂闊な態度を取っていると最悪、逝けますのでご注意の程を。
 実際、ネットのおかげで様々な情報を得られるとはいえ、バンドの生の声や音源を聞く機会は、やはり少ないです。そうすると、CDショップでアイテムを購入する時の判断材料は、雑誌等で得た情報と、陳列位置と、そしてジャケットと曲数、価格だけです。その中でもジャケットは、自分の価値観をアイテムに投影するためのたったひとつの根拠。ジャケットと音は関係無いのですが、それでも購入に踏み切るかどうかの重要な指針であることは確かです。
 こうした中で、ヴィジュの世界ではジャケットどころか変態なパッケージでアイテムを供給する場合が多々ありますが、それらは次回移行に回します。

 さて、今回取り上げる「バロック」(読み方:ばろっく)の現在入手可能なアイテムは二種類。名前が「東京ストリッパー」と「スケベボウイ」・・・いったい何事でしょうか
「東京ストリッパー」は一面ピンク色の地にタイトルとバンドロゴが書いてある、大変シンプルなものなのですが・・・「スケベボウイ」のジャケットは黒人中年の顔アップ。わけがわかりません。どんなジャケットか気になる方は、小さいですが公式ページのディスコグラフィのページをどうぞ。このジャケット、実際にショップで見ると妙な恐怖を感じます
 もしも外れた場合、持っているだけで呪われそうなジャケットのCDは勘弁なので、今回は「東京ストリッパー」を聴いてみることにしました。4曲で\2,000なので、価格的にもまあまあ妥当、むしろお試しとして聴くには最適なボリュームといえます。
 Псиはバロックを全然知りませんが、バンド名を聞いた時のイメージとジャケットのイメージは正反対。正統ゴシックな感じのバンドかと思っていたのですが、一体どんな感じなのでしょうか。


 バロック[東京ストリッパー]
 総合 :☆☆☆**
 楽曲 :☆☆☆☆*
 映像 :(判定不能)
 ネタ度:☆****

 恰好良いです。崩れた唱法に辟易とする方がいらっしゃるかもしれませんが、そうしたパートとサビやサビ前の唄い方のギャップが美味しすぎます。曲調も、スラップベースがうねる上に土曜日の夜に聴くと帰って来れない様な切ない具合の曲調が乗っかっていて、音は大変Псиの好みです。
 歌詞ですが・・・とりあえず一曲目の「イロコイ」の歌詞を見てみましょう。

此処では私は何時も○○お世話しています。
寒さが凍みるこの夜に毎晩男と二人
公演近くのあの場所で疼痛愛に浸ります。
思い出深いあの頃の恋愛♥感情とうに燃え尽きて・・・(涙)

此処で貴方は何時も私を買いに$来ています。
何の関係も無いでしょ(怒)・・・所詮これは色恋。
何時もと違うこの場所でも貴方はきっと待ち伏せて
聞く耳持たずの私に突然・・・話を聞いてねと・・・

「どうか見捨てないで」あれの方なら構いませんから
「僕の愚痴なんか聞いて」大いに尽くしなさいよ

ねぇ、私安かないよ女捨ててるわけじゃないし
嗚呼ひたすら絶叫そう厭厭して苛々したりして・・・
もう今は人生波瀾万丈。神が手掛ける問題でもないし
嗚呼ひたすら来ないそう苛々して厭厭したりして・・・

 最初のサビまで抜粋です。「どうか〜」の下りはとても崩した唄い方、そしてサビ部分はどう見ても歌詞の通りに唄っていない女性語尾モードです。このサビ前の崩して唄っている部分と、サビの部分の唄い方とのギャップがとんでもなく恰好良いのです。曲によっては何を唄っているのかわからないくらいの半端じゃない崩しっぷりを披露している為、そこで辟易とされる方がいるかもしれませんけれど。
 4曲中3曲の歌詞には、絵(四曲目「tight」で「ウサギ」という歌詞はすべてウサギの絵)や括弧付き文字((涙)など)が埋めこまれています。しかも、4曲ともフォントがばらばら・・・。普通、印刷物でページ内に異なるフォントを使う際、三種類が限界だと言われているのですが、この歌詞カードはそんな制約は完全無視。それでもあまり違和感ややり過ぎている感じがないのが不思議です。
 とりあえず、この弾けっぷりをコトバにするのは難しいです。まだるっこしいことは良いから聴いてみると良いと思います。ジャケットの写真を見る限り、なんとなくヴォーカルの「怜」がサンジ(©ONE PIECE)に似ていますし(全然関係ありません)。


 買ってきてからずっとループ再生しているくらい、「東京ストリッパー」は恰好良いです。そうなると、もちろん他のアイテムも欲しくなるのですが・・・「スケベボウイ」のジャケットには手が出せません。というわけで、ジャケットでやり過ぎると潜在的ファンを逃がすという良い例でした。

 Псиは、バロックの楽曲に祝福を送るとともに、買い易いジャケット/名前のアイテムが出るまで涙を流して保留です。うわあん

 

平成14年11月09日 Be a gothic-V[メトロノーム]

 というわけで土曜日恒例の「Be a gothic」、今日は第五回です。この企画を始めて、もう一ヶ月が経ちました。何せ始めてから一ヶ月ですから、この企画の主旨を忘れている方がいらっしゃるかもしれません。そんな方のために、おさらいをしましょう。毎回おさらいばっかりじゃんという本当すぎる突っ込みをされた方には、色とりどりのマシュマロが部屋を飛び回る級の呪いをプレゼントです。覚悟
 Be a gothicは、話題のヴィジュ系バンドのアイテムをПсиがレビュー、果たして自分のジャケ買い&名前買いのセンスは正しいのかとお悩みの方を笑顔で薄暗い所へ連れて行く、そんなコーナーです。
 ただし、このレビューはあくまでПсиの価値観に根付いたものです。ですから、薄暗い所が趣味な方も含めて、鵜呑みにすると咽の奥を火傷するおそれがあります。用法・用量を守った上、自己責任で参考にして下さい。
 なお、どんなバンドのどんなメンバーであっても、Be a gothic内では敬称略です。予めご了承下さい。

 さて、ヴィジュ系バンドの中には、恰好悪く言えば「一言コピー」、もっと恰好悪く言うと「スローガン」を掲げるバンドがいます。それはアイテム登場毎に変わったり、ずっとそのコトバを抱いたまま走り続けるバンドさんもいらっしゃるわけですが。ヴィジュが正しくイメージ商売である以上、そうした「一言」の威力は強力です。
 ただし、間違ったコトバをつけてしまうと、後々までネタとして引っ張られる点には注意が必要です。たとえば、LUNA SEAはインディーズ盤「LUNA SEA」を発表した際、「狂い咲く毒の華」というコトバを雑誌広告やポスターに使用していました。その当時は別に良かったのですが、アルバム「MOTHER」でブレイクした後に「LUNA SEA」の再プロモーションとしてそのポスターが再び流通。髪の立ったRYUICHIや顔が微妙な角度の真矢が登場する集合写真と相まって、「狂い咲く毒の華」という赤い字で書かれたコトバは、LUNA SEAといえば「ROSIER[ロージア]」と「TRUE BLUE」しか知らない世のヒトたちに結構なインパクトを与えました。
 ・・・SLAVEの方に夜道で刺されそうなのでフォローしておくと、このポスターのINORANとSUGIZOは文句無く美麗です。INORANは持前の可愛さを如何なく発揮していますし、SUGIZOはナルっぷりが・・・余計に刺されそうなので、やっぱりやめます。

 今日取り上げる「メトロノーム」(読み方:めとろのーむ)、ПсиにはTVKを見ていて何度かニアミスした以外の接点はなく、ちゃんと曲を聴くのはたぶん初めてです。そんなПсиは、今回の査収物「プラネット」のジャケットを見て、大変気になるコトバを見付けたのでした。

21世紀型宗教音楽
メトロノーム

 ・・・はあ、そうですか。宗教音楽というタームから「黒百合姉妹」という単語が出るПсиはきっともう駄目ですが、とりあえずインパクトの強いコトバであることだけは確かです。
 ショップにはこの4曲入りシングル「プラネット」と、ミニアルバムの「不機嫌なアンドロイド」がありましたが、新しいものを買おうと「プラネット」を購入しました。前にテレビで見た限りでは、ヴィジュアル的にはかなりアレだった気がしたのですが、音はどうなのでしょうか。坂本教授がより宗教に転んだ様な、壮大すぎる楽曲が詰まっていたりするのでしょうか。


 プラネット[メトロノーム]
 総合 :☆☆☆**
 楽曲 :☆☆☆☆*
 映像 :(判定不能)
 ネタ度:☆☆***

 意外でした。普通に良さげです。とてもポップな曲調に打ち込みやサイバーな音の多用、印象的なメロディに乗るメロディのループを壊したがるヴォーカル、その特徴的な声・・・。下手をすると「ムック」と違う意味でヒトを選ぶかもしれませんが、それでもとても面白い音を作っていることは確かです。
 ・・・というか、Псиの印象としてはデビューしたてのCASCADEに打ち込みサウンドを実装、100倍くらいアクを増強した感じ、なのですが・・・今日のПсиは刺されそうな発言ばかりです。

 ただ、いくらヴィジュの世界の懐が広いとはいえ、なんとなくヴィジュっぽくない雰囲気がそこかしこに広がっています。それは、ヴィジュというよりはパンクに寄っているっぽい音の所為かもしれませんし、ただでさえヴィジュの世界には少ない打ち込みとバンドスタイル両方を採っている聞き慣れない音の所為かもしれませんし、時代が時代なら「パンキッシュで歪んだ渋谷系」とかの謎レッテルを貼られそうな曲調の所為かもしれません。
 およそ「ヴィジュっぽい」などの理屈で説明できない上に、考えても幸せになれない辺りを全く気にしないヒトなら、普通に楽しめると思います。

 話は唐突に変わりますが、最近、買ってきたアイテムの「SPECIAL THANKS」を見るのが大好きです。仲の良いバンドはもちろん、メンバーがお世話になったお店やライヴハウス、スタジオ、そして事務所が同じだけのバンドなどが名を連ねるこの部分に、Псиはジャンプの巻末コメントの様な楽しみを見出しているのです。
 最近買ったCDにはなぜか必ずクレジットされている「犬神サーカス団」や、有名なドラマーさん「そうる透」さんの名前に混じって、アップルコンピュータだのビックピーカンといった名前にアレな笑みを浮かべつつも、メンバー紹介の辺りを見ると・・・

メトロノーム
Voice:シャラク
TALBO-01:フクスケ
TALBO-02:リウ
Drum:ユウイチロー

 中央二人はどんなパートですかと思いつつ、そのまま視線を流します。

Produced by メトロノーム

Special Guest:KIBA(Gargoyle)

 はあ?このCD、GargoyleのKIBAが参加されていらっしゃるですか?パニックに陥ったПсиは、声に注意して聞いてみましたが・・・KIBA独特の、ドスの効いた叫びにも似た歌声は発見出来ませんでした。一ヶ所を除いて
 このシングルのラスト「君の訳僕の良い訳」は、打ち込みテイスト全開。ラストながらにぶっつり終わって、大変不安感の残る仕上がりになっています。とりあえず、その曲の歌詞を見てみましょう。

ボクノボクノボクノボクノ
時間はとうとう『0』に近付いてる
キミノキミノキミノキミノ
高価な物では二人に成りきれない
ソレガソレガソレガソレガ
中途半端な気持ちに成っても
コレガコレガコレガコレガ
寂しい気持ちを満たしてくれるだろう

テチガイナキミノワケ
テチガイだ!テチガイだ!

 間奏まで抜粋です。歌詞だけ見るとどこにKIBAがいてもおかしくなさそうですが、考えてみたらKIBAは恋愛な歌詞や誰かに依存な歌詞を書きません。というGargoyle的考察はさておき、実際のKIBAが歌っている(と思われる)個所は、上には書いてありません。でも、上のどこかにKIBAはいます。・・・別に、Псиはレティクルからの電波を受信したわけではありません。この辺りを説明するために、サビの部分を耳コピしてみましょう。

テチガイナ(oi!)キミノワケ(oioi!)
テチガイだ!(oi!)テチガイだ!(oioi!)

 この「oi!」という掛け合いの声がKIBAっぽいです。・・・Gargoyleといえば、結成15周年を迎えたヴィジュの世界の老舗。今でもコアなファンは数多いGargoyleのヴォーカル、KIBAの扱いとしてはぞんざいすぎて素敵です。
 なんでも、メトロノームはKIBAプロデュースのイヴェントに登場したりと、色々と交流がある様なのですが・・・参加バンドを調べてみたら色々と今後のネタになりそうなので、今回はその点はスルーです。
 少しでも興味を持たれた方は、お試しの意味でも「プラネット」はお得だと思います。どうやら、メトロノームは現在三連続でシングルを発表しているらしく、「プラネット」はその第一弾。第二弾シングルである「セルフコントロール」が最近発売されました。「プラネット」が気に入った方は続くシングル二枚を追い掛けると良いと思いますが、そこから先はПсиも聴いていませんので保証の対象外です(元々何の保証もありませんけど)。


 ジャケットが見れば見る程意味を探れて好きになれる辺りも含めて、「プラネット」は本当に素敵でした。ただ、惜しむらくはどう宗教音楽なのかさっぱりわからなかった辺りです。それとも、ヒトには解るけど天使には解らないものなのでしょうか。謎です。
 歌詞にも曲にも宗教的なタームは一切無し、強いて言えば強く誰か/何かに依存する歌詞が主っぽいのですが・・・その辺の絡みでしょうか。少なくとも、インタビューを読んだことも見たこともないПсиにはわかりませんでした。
 曲さえ良ければそんなことはどうだって良いですが、言われてる以上は気になるという感情もあったりで、なんだかちょっぴり複雑な気分です。

 Псиは、メトロノームの作品に祝福を送るとともに、そろそろGargoyleのアイテムをまとめ買いしようと思います。

 

平成14年11月02日 Be a gothic-IV[D=SIRE]

 というわけで土曜日恒例の「Be a gothic」、今日は第四回です。三回過ぎたんだから、もう紹介は良いと思った方、甘いです。どのくらい甘いのかというと、雪苺娘仮想八重洲店の夏期限定ブルーベリー味「なつ娘」並みに甘いです。
 今日は月頭ですので、いつもとちょっぴり趣向を変えて、既に解散されつつ、今でも何かしらの影響が残っているヴィジュ系バンドを取り上げようと思います。
 その為、いつもは「最近話題の」「Псиが初めて聴くバンド」というのが評価対象ですが、月頭だけはちょっと違います。・・・そうは言っても、ファンしか嬉しくない話をだらだらと重ねるつもりはありませんし、その時ヴィジュを生きたヒト限定のお話も辛いでしょうから、歴史を知ることに意義があり尚且つПсиが深く知り過ぎないバンドを中心に取り上げると思います。予定は未定ですけれど
 なお、例によって評価を鵜呑みにすると咽を火傷するおそれがあります。もしもそうなっても、Псиは薬を塗ることすらできかねるのでご了承下さいませ。

 さて。ヴィジュの世界では、メンバーが完全に固定で安泰か、もしくは誰が見ても波乱万丈な程にメンバーの流動が著しいか、どちらかふたつに分類できます。後者であっても、その内流動するパートを永久欠番にしてしまうことで前者に転ぶ場合もあります。これはGLAYのドラムやROUAGEのベースなどが良い例ですね。
 基本的に、メジャーの世界に入れたバンドはそうそうメンバー変更を行わないものですが、インディーズの世界は混沌。XXXのバンドを脱退したメンバーがOOOのバンドへ、といったことは日常茶飯事であり、授業から脳内逃避したい時等に暇潰しとして「ヴィジュ系バンド相関図」などを作成し始めると収集がつかなくなるのは確実です。
 かつて、音は良質な上、現在のヴィジュに多大な影響を及ぼす様々なタームを作り上げたにも関らず、バンドの波乱万丈っぷりを如何なく体現した挙げ句に解散してしまったバンドがありました。今日は、「D≒SIRE」[読み方:でざいあ]を取り上げたいと思います。なお、見出しには「D=SIRE」と書きましたが、正確にはニアリーイコールです。恨むのであれば、半角の文字セットにニアリーイコールが無いことを恨んで下さい。

 D≒SIREは、インディーズで登場した時から話題のバンドでした。シングル「静夢」「楽園」「追憶」のコンセプチュアルな作品作りは定評がありましたし、ヴィジュ系雑誌では常に前の方に掲載。言ってみれば、連載開始からなかなか後ろに下がらない「ミスターフルスイング」の様な扱いです。
 シングル「追憶」を出した後は、現在のファンと潜在的ファン期待の1stアルバムの制作に着手するわけですが、その頃になると一転して不穏な空気が流れます。アルバムの制作中にメンバーが変更し、新メンバーと旧メンバーが入れ代わりつつ、ドラムには「打ち込みとは思えないほどの出来栄えのドラム」。こうして世に出たアルバム「終末の情景 −La Scene Du Finale−」は、1s pressと2nd press(一般的には初版と二版)を合わせて80,000枚という脅威の枚数を売り上げました。
 その後、人気は相変わらずなのに雑誌にはちょくちょく「脱退」の文字が踊ることになり、ヴォーカルにしてD≒SIREのコンセプト担当、更には唯一のオリジナルメンバーである幸也は、正式結成の5年後である1998年の12月25日にD≒SIREを解散させてしまうのでした。

 ここまでD≒SIREの簡単な歴史を振り返ってみましたが、実はПсиが持っていたD≒SIREのアイテムは「終末の情景」のみでした。それも、リアルタイムで買ったわけではなく、少し後に中古で買ったという明かすには痛い経緯があります。
 どうして中古で買った上、その後も何もアイテムを買わなかったのかといえば、理由は簡単で感動的にお金が無かったからですが。もうひとつ理由があって、その頃読んでいた雑誌(お金が無いのでもちろん立ち読み)にあまりにも「脱退」の文字が乱舞していたため、音は良いとは思いつつもバンド自体に良い印象を抱いていなかった、ということがあります。
 しかし、ヴォーカルの幸也のD≒SIRE後のプロジェクト「JILS」が面白そうなこと、そしてヴィジュの世界に与えたインパクトを考慮して、今になってD≒SIREをレビューしてみようと思った次第です。
 D≒SIREは東芝EMIからメジャーデビューと同時に解散というカタチをとりましたが、今日はそのメジャー唯一のアイテムである「異窓からの風景−失われた終末の情景」のレビューです。
 このアルバムは怒濤の三枚組。「BEST " LAST ALBUM」と銘打たれたこのアルバム、1stアルバムのタイトルが「終末の情景」、2ndアルバムのタイトルが「異窓からの風景〜想刻〜」、その後のミニアルバムが「異窓からの風景〜断章」だったことを考えると、ただならぬ気合いを感じます。同時にアルバム寄せ集めだったらどうしようという嫌エンド構想も浮かびましたが・・・


 異窓からの風景−失われた終末の情景[D≒SIRE]
 総合 :☆☆☆☆*
 楽曲 :☆☆☆☆*
 映像 :(判定不能)
 影響度:☆☆☆☆☆

 解散したバンドにネタっぽさを求めても意味が無い為、月頭のレビューではその後の影響度を評価します。それはアイテムの評価と関係ありませんが、その辺りはお察し下さい
 D≒SIREのアイテムの特徴として、アルバムの頭はインスト(曲のみ)なことに端を発する、コンセプチュアルなアルバム作りが挙げられます。disc-I[失われた終末の情景]は、アイテム全体の雰囲気を重視するD≒SIREの文法に忠実に則ったベスト盤です。
 基本的に激しいビートの曲はなく、とてもメロディアスな曲が主体です。また、「過ぎ去りし 刻を想う・・・」という出出しのモノローグ+インスト「相刻」で始まり、「光に満ちた救いの朝を信じて 生まれ変わりたい」で終わるモノローグ+インストの「浄刻」でアルバム自体も終わるという構成も素敵。Псиは、単純ながらこのアルバムが普通に好きになれそうです。
 アルバム「終末の情景」に入っていた曲も収録されているわけですが、なんだか違和感を感じたので、「終末の情景」も聞き直してみました。どうやら、打ち込みとは思えないほどの出来栄えのドラム全部生のドラムに差し替えられた模様です。「終末の情景」のテイクよりも随分落ち着いた印象を受けたのは、おそらくその所為でしょう。・・・とは言いながら、調べてみると同じ曲がいろんなアルバムに出てくる様なので、「終末の情景」以外からのテイクなのか、それとも録り直しなのかはよくわかりません。

 disc-II[VOICELESS]は、曲名を見る限りdisc-Iと全く同じ。なんだろうと思ったら全曲ヴォーカル抜きでした。悪い言い方をすればカラオケ集ですが、唯一のオリジナルメンバーである幸也の声が抜いてある、という辺りに意味を感じれば良いのでしょうか。ただ、ピアノやストリングスが使われた曲が多い為、映画のサウンドトラックを聴いている様で普通に素敵です。
 [VOICELESS]は[失われた終末の情景]全13曲のインストを収録しながら、12曲目の「追憶−Nostalgia−」だけが「Nostalgia−追憶−」になっています。理由も両者の曲の違いも、Псиにはわかりません。

 disc-III[A:DAY]は新曲のみのトラックです。そうはいいつつも「MOON−COMPLETE−」や「想刻−Re:mind #3−」など、アイテム持ちでないПсиには分からない裏技もありますが、タイトルや位置づけを気にしなければ、素敵なミニアルバムです。
 アルバム開始と終了が[失われた終末の情景]と共通する雰囲気な為、[失われた終末の情景]を4曲に凝縮した様な印象を受けました。というか、収録時間は圧倒的に違うのに、どちらも同じくらい時間が経過した様な錯覚を感じさせます。


 D≒SIREは、この後シングル「STAY」、バラードアルバム「転生前夜 Re-BIRTHDAY "EVE"」を発表した後、12月25日に行ったSECRET GIGを最後に解散しました。ワンマンのライヴもメジャーデビューも嫌い、幾度となくメンバーの入れ換えを繰返しながらも作品を作ることに余念が無かったD≒SIREは、こうして伝説になりました。
 ちなみに、幸也はD≒SIRE終了前からプロデュースワークに精を出しており、dir en greyやBlueなどを手掛けました。その後、新バンドJILSを結成、メンバーは微妙に入れ代わりながら今に至ります。
 プロジェクト単位の発想や、コンセプトを持ち込んだ作品と展開、そしてメジャーデビューと同時に解散等の様々なスタイルは、その後のヴィジュ系バンドに多大な影響を与えました。
 しかし、コンセプトがアイテム単品で終わらず、複数のアルバムに跨がる様な展開になった場合、後から入るファンや一見さんは戸惑ってしまうのが世の常です。実際、今回のアルバム自体は素直に良いと思えたのに、曲名や構成に鏤められたタームの幾つかは、意図的なのか偶然なのか判断できませんでした。
 気にしなければ気にならないけれど、ヴィジュ好きなら大概は気になる筈のこうした展開は、JILSではあまり見受けられなさそうです。そんな意味でも、Псиは今更ながらにJILSにちょっぴり期待しているのです。

 Псиは、1stと結構曲が被っているD≒SIREの2ndに手を出すかどうか迷いつつ、終わってしまったD≒SIREにも、そして今も走り続けるJILSにも、いっぱい祝福を送ります。

 



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